近年は、多くの人が空気の汚染状態について関心を寄せるようになりました。そんななか、「PM2.5」と呼ばれる物質の名前を聞いたことがある人も、多いのではないでしょうか。PM2.5は人体に入ることで健康被害を引き起こす可能性があり、室内への侵入を防ぐことが難しいことでも知られている厄介な物質です。
ここでは、PM2.5への対策を考えている方に向けてPM2.5の特徴や人体に与える影響、排除方法について解説します。
PM2.5とは
PM2.5とは「particulate matter」の略称であり、直径がおおむね2.5μm(マイクロメートル、1マイクロメートル=1ミリの1000分の1)以下の超微小粒子のことを指します。「微粒子状物質」とも呼ばれており、目で見えないほどの大きさで大気中を漂っている物質です。特定の物質を表す言葉ではなく、環境基準における非常に小さな粒子の単位として用いられています。PM2.5の発生原因は、以下の2つです。
【PM2.5の発生原因】
- 一次生成:工場の煤煙やボイラー、自動車の排気ガスなどに代表される物体の燃焼による排出
- 二次生成:環境大気中での化学反応による生成
また構成する成分には、炭素成分や硫酸塩、硝酸塩などのほか、ケイ素やナトリウムなどの無機元素も含まれています。さらに加えて、さまざまな粒径の物質が含まれており、季節や地域などによって組成が変動します。季節による濃度変化としては、冬から春にかけて濃度が高まることが一般的です。
PM2.5は非常に小さな粒子であることから、肺の奥深くまで入り込みやすいという特徴があります。そのため、呼吸器系疾患や肺がん、循環器系疾患の発症リスクを高めるとして、健康への影響が危惧されている物質です。
PM2.5のサイズ感
PM2.5はその名の通り2.5μm程度の粒子ですが、これは一体どのくらいの小ささなのでしょうか。あくまでイメージですが、多くの方が悩まされているスギ花粉と比較しても、以下の通り非常に微細です。
イラストが無い(深田さんに確認)
スギ花粉が鼻や目から体の中に入りこんでしまい、花粉症に苦しんでいる方は少なくありません。これだけ小さい粒子であることから、PM2.5を吸い込むと肺の奥まで達してしまい、さまざまな健康被害を引き起こしてしまうのです。
PM2.5の侵入を防ぐのは難しい
PM2.5は非常に細かく軽いことから、屋外から屋内への侵入を防ぐことが困難です。屋外を長時間にわたって漂っており、ドアや窓の開閉などによって空気が入り込んでくるのと同時に、PM2.5も屋内へ侵入してしまいます。日常生活を普通に送っているだけでも、室内へいとも簡単に侵入してきてしまうのです。
近年では建築基準法が改正されたことで、原則として2003年7月以降に建造されたすべての建造物に「24時間換気システム」が設けられています。そのため、屋外の空気は常に室内に入ってきていることとなり、ドアや窓を開けなかったとしてもPM2.5が侵入することが十分に考えられるでしょう。
もちろん古い建物など気密性が低い建物の場合も、PM2.5 は簡単に室内入り込んできてしまいます。このように、私たちが住んでいる一般的な建物においては、PM2.5の侵入を防ぐことは困難といえるのです。
さらに、PM2.5は室内でも発生します。例えばタバコやろうそく、線香などの燃焼物やガスコンロをはじめとする調理器具、石油ファンヒーターなどの暖房器具からもPM2.5は発生するのです。
PM2.5が人に与える影響
PM2.5は、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患や肺がんのリスクを高めるなど、循環器系に対しても悪影響を及ぼすとされています。PM2.5は非常に細かいことから気管・気管支よりもさらに奥深く、肺胞にまで到達すると考えられており、肺の奥までに入り込んだPM2.5は物理的な刺激を引き与えたり、アレルギー反応を起こしたりします。
こうした健康への悪影響から、環境省では2009年に「1年の平均値が15μg/㎥(μg=マイクログラム、1マイクログラム=1グラムの100万分の1)以下、かつ1日の平均値が35μg/㎥以下」の値を環境基準として定めました。この環境基準を下回ることが、私たちの健康維持のためには望ましいと考えられているのです。
さらに、1日の平均値70μg/㎥を注意喚起のための暫定的指針と定め、平均値を超えた場合には屋外での長時間の激しい運動や外出を減らすことを推奨しています。ただし上記はあくまでも暫定的な値であり、今後データの蓄積や新たな知見の発見などによって、適宜見直される可能性も。
室内のPM2.5を排除する方法
室内に侵入したPM2.5を排除する方法としては、以下が考えられます。侵入自体を防ぐことは難しいため、上手に排除する方法を理解しておくことが重要です。
【室内のPM2.5を排除する方法】
- PM2.5対応のエアコンを使用
- HEPAフィルター搭載の空気清浄機を使用
- 空調システムを導入している場合はPM2.5対応にする
PM2.5対応のエアコンを使用
上手に排除する方法としてまず考えられるのが、PM2.5に対応したエアコンの使用です。PM2.5に対応したエアコンには、以下のようにさまざまな機能が備わっています。
【エアコンの主なPM2.5対策機能】
- イオンを放出して汚染物質を分解・抑制する
- 高性能の集塵フィルターによって汚染物質を捕集する
- 電気で汚染物質を引き寄せて集める
上記の通り、空気清浄機と同じ機能が搭載されているエアコンであれば、PM2.5に対する対策になるでしょう。
また、一般的なエアコンであれば気にする必要はないですが、外気を取り入れて換気する機能があるエアコンには注意しましょう。通常の換気機能であるエアコンであれば室内の空気を外に出すだけですが、一部の高機能なエアコンには外気を取り入れる機能が搭載されており、PM2.5も入り込んできてしまう恐れがあります。ごく一部のエアコンに限りますが、念のため確認しておいてもよいでしょう。
HEPAフィルター搭載の空気清浄機を使用
HEPAフィルターが搭載されている空気清浄機を利用することも、PM2.5における対策の1つ。HEPAフィルターとは、端的にいうと高性能なフィルターのことを指します。何重にもジャバラに折りたたまれた状態になっていることで捕集面積を広げている点が、HEPAフィルターの特徴です。
HEPAフィルターは、「0.3μm以上の粒子に対して99.97%以上の捕集率を持つフィルター」とJIS規格で規定されており、0.3μm以上の物質をキャッチできるため、PM2.5に対しても効果を期待できます。
空調システムを導入している場合はPM2.5対応にする
もしオフィスが空調システムを導入しているのであれば、一度見直してみることも大切です。近年ではPM2.5への関心が高まるとともに、除去機能を持った空調システムや侵入を防げる外気ダクトなどの製品が市場に出回るようになりました。空調システムを新調することで、健康被害を未然に防止することが期待できるでしょう。
また近年では一般の戸建て住宅に対しても、空気清浄システムが販売されています。気になる方は、積極的に導入を検討してみるのがおすすめです。
PM2.5が多く発生している日はドアや窓の開閉を最低限にする
PM2.5の濃度が高まっている日には、吸入してしまう量を減らすためにドアや窓の開閉をなるべく減らすことが推奨されます。
PM2.5は非常に微細で軽いため、外気が入り込むのと同時に室内に入り込んでしまうためです。前述した注意喚起基準値である「1日平均値70μm/㎥」を超えた日は、ドア・窓の開閉をなるべく控えることが大切でしょう。
特に風の強い日であれば、ドアや窓の開閉は極力減らすことをおすすめします。呼吸器系・循環器系の疾患を持っている人や高齢者、子供がいる家庭も同様。また換気についても最小限に留めて、換気扇や換気口に専用フィルターを付けることもおすすめします。
屋外の大気汚染情報は「そらまめくん」で確認
屋外の大気汚染情報を確認したいのであれば、「そらまめくん」というサイトを活用することをおすすめします。「そらまめくん」は、環境省が運営している大気汚染物質広域監視システムです。全国各地の大気汚染測定結果や光化学オキシダント注意報・警報発令情報について、24時間体制で情報提供を行っています。
PM2.5注意喚起情報が実施されている都道府県もリアルタイムで公開しており、いつでも情報を得られる点が大きなメリットです。また、サイト内には東アジアの「PM2.5モニタリングデータ」へのリンクもあり、信ぴょう性の高い情報源として便利かつ手軽に利用できるでしょう。
サイト上での操作も決して難しくなく、「Google Chrome」や「Firefox」といった通常のブラウザで見られます。そして一般の方でも利用しやすいように、配慮されていると考えられるデザインです。APIも公開しており、個人利用であれば無償で利用できます。
PM2.5が多く発生している日はできるだけ室内干しにする
PM2.5が多く発生している日は、できる限り洗濯物を外には干さず、室内干しすることをおすすめします。PM2.5は、黄砂や花粉、ほこりに付着しやすいといわれており、これらと一緒に布団や洗濯物に付着する恐れがあるためです。特に花粉などの濃度が濃くなる季節では、部屋干しを基本とし、なるべく部屋の中に侵入しないようにすることが大切でしょう。
部屋干し臭が気になってしまう場合は、部屋干し専用の洗剤や除菌効果のある洗剤を活用しましょう。また、速乾機能がある柔軟剤を使用し、干す時間を短くして臭いが発生しにくくすることもおすすめ。さらに、乾燥機や除湿器を活用できれば、洗濯物が大量にあったとしてもスピーディーかつ衛生的に乾かせます。
どうしても外干ししたい場合は、濃度が濃くなりやすい昼~夕方の時間帯を避け、早朝に干すようにするのがおすすめです。さらに洗濯物カバーを活用することでも、洗濯物に付着する量を減らすことができるでしょう。他にもサンルームやテラス囲いに洗濯物を干す、「そらまめくん」で事前に濃度をチェックしてから干すなどの対策が考えられます。
まとめ
PM2.5とは、直径約2.5μm程度の微粒子状物質のことを指します。非常に微細で軽い物質であることから、空気中を長時間漂い、人体に入ると肺の深くまで到達して呼吸器系・循環器系の健康トラブルを引き起こすとされています。
また、その微細さから窓やドアの開閉によって空気と一緒に室内に侵入してしまい、気を付けていても侵入を防ぐことは困難。そのため、対応機能があるエアコンを使用する、HEPAフィルターを搭載した空気洗浄機を利用するなどの対策を行い、PM2.5を上手に排除するようにしましょう。