新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大したことで、私たちの生活は大きく変化しました。現在、ウイルス感染を防ぐための方法に対して、関心を持っている方も多いのではないでしょうか。
この記事ではウイルス感染の予防方法について調べている方に対して、ウイルスの特徴や細菌との違い、効果的な予防方法などについて解説します。
ウイルスとは
ウイルスとは、生物の細胞を利用して自分を複製し増殖していく、極微小な感染性の構造体です。タンパク質の殻と内部の核酸というシンプルな構造をしており、単体では増殖できません。人や動物などの細胞に入り込み細胞の機能を利用することで、初めて増殖することが可能となるのです。
ウイルスにはさまざまな種類がありますが、全てが生物の身体に悪影響を及ぼすというわけではありません。ごく一部のウイルスが影響して重い病気を引き起こしているだけであり、それ以外のウイルスは体内に侵入しても特に気づかずに生活していることが大半です。
人の身体に悪影響を及ぼすウイルスとしては、インフルエンザウイルスやノロウイルスなどが挙げられます。ウイルスが生物の体内へ侵入してくる経路は、主に以下の通りです。
【ウイルスの主な感染経路】
- 接触(経口)感染:ウイルスが付着した食品を食べる、ウイルスが付着した手で鼻・口などを触る
- 飛沫感染:感染者の発声やくしゃみ、咳などの際にウイルスが含まれた唾液が飛び散り、吸い込む
- 空気感染:空気中に漂うウイルスを吸い込む
ウイルスのサイズ感
ウイルスは、0.1μm(マイクロメートル、1マイクロメートル=1ミリの1000分の1)と極めて小さな構造体です。以下で、ウイルスと細菌や飛沫などとの比較を簡単に図にしています。あくまでもイメージですが、ウイルスがいかに微小であるかが分かるでしょう。
毎年多くの人が悩まされ、マスクで何とか防ごうとしている花粉も、ウイルスと比較すると上記の通りの大きさです。花粉の1つひとつは肉眼では確認できませんが、大量に集まると粉のように見えます。しかし、ウイルスは私たちの想像を超えるほど小さいため、いくら大量に集まっても肉眼で見ることはできません。
また細菌と比較しても、ウイルスは非常に小さい存在です。そのため、気づかない間に目や鼻、口などから体内に侵入し、種類によっては人体に悪影響を及ぼします。
ウイルスの増殖方法
ウイルスは単体では増殖できず、他の生物の細胞に入り込むことで初めて増殖できる微生物です。ウイルスは他の生物の体内に入ると、細胞に入り込んで自分の複製を作ります。そして複製された大量のウイルスが細胞を破裂させて飛び出し、他の細胞に入り込んで複製を作るという流れを繰り返しながら増殖していくのです。
そして大量のウイルスが飛び出した細胞は、そのまま死滅してしまいます。ウイルスは宿主である細胞が死亡してしまうと生き残れなくなってしまうため、さまざまな方法で他の生物に感染を広げ、生き残っていこうとします。
細菌との違い細菌との違い
ウイルスとよく混同されるものに、細菌が挙げられます。両者の違いは、おおむね以下の通りです。
ウイルス | 細菌 | |
大きさ | 0.1μm程度 | 1μm程度 |
細胞の有無 | なし(タンパク質の殻と内部の核酸) | あり(単細胞) |
増殖方法 | 他の生物の細胞内で増殖する | 自ら細胞分裂して増殖する |
抗菌薬の効果 | 効果なし | 効果が期待できる |
代表的な例 | インフルエンザウイルス ノロウイルス 麻疹ウイルス | 大腸菌 結核菌 破傷風菌 |
両者の大きな違いとしてまず挙げられるのが、大きさ。ウイルスは、細菌の50分の1程度の大きさしかありません。また、細胞の有無も両者の大きな違いです。細菌は単細胞生物であり、自ら細胞分裂して増殖することが可能。しかしウイルスは細胞を持たず、人間を含む他の生物の細胞に入り込んで増殖する極微生物です。
そして、細菌には抗生剤や抗生物質などの抗菌薬が有効ですが、ウイルスは細菌と全く違う生物であるため、抗菌薬が効きません。ウイルスに対抗するための「抗ウイルス薬」も開発されていますが、まだ開発事例が少ないのが実情です。
ウイルス感染の特徴
ウイルス感染は、以下のようにさまざまなことが原因となって起こります。
【ウイルス感染の原因となるもの】
- ウイルスを吸入する
- 蚊をはじめとする虫から刺される
- ウイルスが付着した食べ物を食べる
- 性的な接触をする
ウイルス感染は呼吸器や消化器、その他の内臓などさまざまな部分に感染症を引き起こし、その症状も多種多様です。例えば、肝臓がウイルス感染症の影響を受ければ肝炎が起こり、皮膚に影響が出ればイボや発疹を引き起こすこともあります。
ウイルス感染症には抗菌薬が効かず、抗ウイルス薬やワクチンなど発生後の対抗策しか現状ではありません。そのため、対策に非常に時間がかかる点が、ウイルスが私たちにとっての脅威となるポイントなのです。
ウイルスによって感染する病気の種類
ウイルスによって感染する病気としては、以下が挙げられます。
ウイルスの種類 | 病気 |
インフルエンザウイルス | インフルエンザ |
ノロウイルス | 感染症胃腸炎 |
麻疹ウイルス | はしか |
風疹ウイルス | 風疹 |
HIVウイルス | エイズ |
新型コロナウイルス | コロナウイルス感染症 |
年世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスも、ウイルスの一種です。
ウイルス感染の予防方法
ウイルス感染を予防するためには、以下の予防方法が考えられます。
【ウイルス感染の予防方法】
- 予防接種を受ける
- 手洗い、うがいをする
- 換気をする
- 人が集まる場所を避ける
- マスクを使う
予防接種を受ける
ウイルス感染の予防方法としてまず挙げられるのが、予防接種です。ワクチンを接種することで、一定の感染予防効果が期待できます。ただしワクチン接種したからといって、ウイルス感染を確実に予防できるわけではありません。しかし、ワクチンを接種することで、万が一ウイルスに感染したとしても重症化する確率を下げる効果が期待できます。
また、ワクチンはその年の流行に合わせて生産されている点にも、留意しておくことをおすすめします。ウイルスのタイプは流行ごとに異なる「変異種」であることが多いため、毎年流行前に接種することが大切です。
手洗いうがいをする
【正しい手の洗い方】
- 流水でよく手を濡らした後、石鹸を付け手のひらをよくこする
- 手の甲を伸ばすようにこする
- 指先や爪の間を入念にこする
- 指の間を洗う
- 親指と手のひらをねじり洗いする
- 手首も洗う
- 充分に水で流す
- 清潔なタオルやペーパータオルでよくふき取って乾かす
参考:厚生労働省HP
上記に加えて爪は短くし、常に清潔に保っておくことが大切です。また手洗いだけでなく、うがいも併せて行い、喉に付着したウイルスを体内に入り込まないようにすることも重要でしょう。
換気をする
室内にウイルスが漂っていることも考えられるため、定期的に換気をすることも効果的。少なくとも2~3時間に1度は換気を行い、ウイルスを外に排出することをおすすめします。
ただし、夏場に窓を開ける際は、エアコンの設定温度を少し低めにするなど、熱中症にならないように気を付けましょう。加えて、冬場で外が寒いときに窓を開ける際は、開ける時間を少し短めにして1時間おきに換気を行うことをおすすめします。
なお、一般的なエアコンには換気機能がないため、エアコンを運転させていても換気は必要なので、注意しましょう。
人が集まる場所を避ける
ウイルス感染予防の観点からは、人が集まる場所をできるだけ避けることも大切です。人が多い場所には感染者がいる可能性が高く、飛沫感染や接触感染などのリスクが高まるためです。特にウイルスの流行時期は不要不急の外出を避けることで、感染リスクの低下を期待できます。
マスクを使う
ウイルス感染症拡大の観点からは、マスクを着用することも重要です。マスクを着用することで、くしゃみや咳などをした際の飛沫粒子を飛散させることを防げます。ただし、マスクフィルターの方がウイルスよりも大きいため、予防効果はあまり期待できません。あくまで感染拡大対策であることを覚えておきましょう。
もしマスクでウイルス感染予防する場合は、不織布ではなくウイルス用のマスクを使うことをおすすめします。一般的な不織布マスクでは目が粗く、ウイルスを通してしまう可能性があるからです。
すぐにできる感染を防ぐための換気方法
ウイルス感染を防ぐために励行したいのが、換気。すぐにでも行える換気方法としては、以下が挙げられます。
【感染を防ぐための換気方法】
- 窓・扉を開ける
- 換気扇の使用
- 換気設備の使用
窓・扉を開ける
すぐにできる換気の方法としてまず挙げられるのが、窓や扉を開けること。窓が複数ある場合は、対角線にある窓を開けると風の通り道ができて効果的です。このとき、なるべく直線距離が長い窓同士を開けることで、空気の通り道が長くなるので、より多くの空気を入れ替えられます。
風が通りにくい場合は、外気を入れる側の窓を小さく開け、室内の空気を出す側の窓を大きく開けると風が通りやすくなります。窓が1つだけの場合は、ドアも開けて扇風機を窓の外に向けると、風の流れができやすくなるでしょう。
換気扇の使用
換気には、換気扇の使用も効果的。台所やトイレ、浴室などに設置されている換気扇を回すことで、家全体の空気を効率的に換気できます。特に台所の換気扇は住宅の中でも排気量が大きいため、上手に活用したいところです。
台所に近い窓を開けても部屋全体の換気はなかなかできないため、台所からなるべく離れた窓を開けることをおすすめします。窓を開け、換気扇を一緒に回すことで、換気効率を高められるのです。
換気設備の使用
また、効果を低減させないためには、給気口・排気口のフィルターを定期的に清掃しておくことも大切。さらに、空気の通り道を塞がないように、給気口・排気口の付近にはあまり物を置かないようにしましょう。
まとめ
ウイルスは細菌とは構造が全く異なるため、抗菌薬は効かないのが一般的です。ウイルスに有効な抗ウイルス薬も、あまり開発されていないのが実情です。そのため予防接種を受けたり、手洗い、うがいを徹底したりなどして、ウイルス感染の予防に努めましょう。また、感染を予防するためにすぐできる方法としては、換気も挙げられます。上手に換気を行い、日常生活を安心して過ごしましょう。