私たち人間が地球で生きていくためには、空気が必要です。空気が汚れてしまうと、自然環境に悪影響を及ぼすだけでなく、その空気を吸って生きていく人間にも当然悪い影響があります。特に、呼吸器系が弱い人や工場などで働く人は、大気汚染に関心があるのではないでしょうか。
この記事では、人間が空気を汚さないためにできることを紹介し、大気汚染の現状と発生理由、問題点も併せて解説します。大気汚染に関して学び、汚染の抑制につながる行動をとっていきましょう。
大気汚染は深刻な問題となっている現状
まずは、大気汚染の現状について簡単に解説します。
大気汚染とは、地球上の空気がさまざまな物質により汚れること。汚染の原因となる物質は、自然・人工問わず存在しますが、大気を汚している主な物質は人間によって生み出されたものです。自動車や工場の排ガスが分かりやすい例でしょう。日常生活で生まれる物質によって都市・生活型の大気汚染が深刻化しているのが、大気汚染の現状です。
大気汚染は地球上の全ての国が抱えている問題です。工業化が著しい地域(アジアなど)では、経済活動の活発化に伴い、汚染物質の排出が増加は避けられず、結果的に汚染が進んでしまっているのが現状です。
日本では「大気汚染防止法」に基づき、環境基準の設定や排ガスの抑制などに取り組んでいるめ、日本の大気汚染の状況は少しずつ改善されつつあります。しかし、大気汚染問題は国内規模ではなく、地球規模で取り組む必要があることはいうまでもありません。
なぜ大気汚染は起こってしまうのか?
大気汚染は自然・人工問わず、特定の現象・行為によって大気汚染物質が生まれることにより起こります。では、大気汚染物質はどのような活動によって生まれるのでしょうか。大気汚染の原因には、以下の3種類が考えられています。
- 自然発生源…自然の活動により、汚染物質が発生
- 固定発生源…人間の活動のうち、燃焼や粉砕によって汚染物質が発生
- 移動発生源…人間の活動のうち、乗り物を用いた移動によって汚染物質が発生
ここでは、上記3種類の発生源についてそれぞれ解説します。
自然発生
自然発生源とは、汚染物質が発生する要因が自然活動であるケースです。自然に起因するため、人間が発生を抑制することは難しいとされています。
自然発生源としては次のようなものが挙げられます。
- 火山の活動
- 森林火災
- 花粉や砂塵、黄砂
- 海風による海塩粒子
- オゾン層
例えば、火山活動の場合、噴火の際に浮遊粒子状物質や硫黄酸化物などが放出されます。浮遊粒子状物質を人間が吸引した場合、呼吸器へ悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
黄砂は、砂漠などから風によって舞い上がり運ばれることが多い物質。鉱物粒子などからなり、空中を浮遊する際に有害な物質が付着するケースが少なくありません。人体への影響としては、呼吸器や粘膜への刺激が挙げられます。
固定発生
固定発生源とは、人間の活動を起因として汚染物質が発生するケースのひとつです。汚染物質は、ものの燃焼や粉砕によって発生しています。
次のような汚染物質を発生させる施設に対しては、大気汚染防止法により厳しい規制がかけられています。
- ばい煙発生施設(加熱炉、ボイラー、溶鉱炉、焼却炉など)
- 一般粉じん発生施設(粉砕機、土石の堆積場・コンベアー)
- 特定粉じん発生施設(アスベストなどを取り扱う機器類)
これら3種類に加え、「特定施設」に分類される施設にも規制がかけられています。特定施設とは、大気汚染の被害を生む可能性がある物質を発生する施設のことです。
なお、これら工場などからの発生だけでなく、一般家庭からの汚染物質が発生する場合も「固定発生源」に含まれます。
移動発生
移動発生源とは、移動中を起因として汚染物質が発生するケースのことです。基本的には自動車や航空機、船舶、鉄道などの利用が移動発生源に該当。これらの乗り物は、駆動に伴い排気ガスが発生します。このガスが汚染物質であり、こちらも法律により規制されています。
自動車の排ガスの場合、汚染物質に指定されているのは次の通りです。
- 一酸化炭素
- 炭化水素
- 鉛化合物
- 窒素酸化物
- 粒子状物質
大気汚染によって発生する問題
ここでは、大気汚染が原因によって発生する問題について見ていきましょう。
光化学オキシダントの発生
光化学オキシダントとは、太陽から降り注ぐ紫外線のエネルギーと特定の物質が反応してできる汚染物質の総称です。自動車や工場などの排ガスに含まれる炭化水素や窒素酸化物が紫外線と反応を起こし、オゾンやアルデヒド、PANが生成されます。なお、この場合の炭化水素や窒素酸化物は、「一次汚染物質」とも呼ばれます。
光化学オキシダントの濃度が高い場合、「もや」のようになり、これは光化学スモッグとされています。強い酸化力を持つことが特徴であり、人体へ悪影響を及ぼします。誤って吸引した場合、目がちかちかすることや喉の痛みの原因となるでしょう。気管支炎にかかったり、肺機能が低下したりする可能性も否定できません。自然への影響は、落葉や白い斑点の発生などが挙げられます。
「最高気温が25℃以上」「風速が4m/s以下」などの条件が揃うと、スモッグの濃度が高くなりやすいとされています。気象庁によって「スモッグ気象情報」が出される場合もあるため、気象に関する情報を把握することで光化学スモッグによる影響を受けないように行動することもできるでしょう。
PM2.5の発生
PM2.5とは、大気中を浮遊する2.5μm以下の粒子状の汚染物質のことです。メディアなどで耳にする「PM2.5」は、特定の物質を指しているわけではありません。PM2.5の成分としては、硝酸塩や硫酸塩、炭素成分、ケイ素、アルミニウムなどが挙げられます。
PM2.5は排ガスのような人間の活動を起因として発生するだけでなく、自然活動を起因とする場合もあります。冬から春にかけて濃度が高くなるのも特徴です。
PM2.5の大きさは、1本の髪の毛(太さ)の30分の1といわれています。こう聞くと、PM2.5がいかに小さな汚染物質であるかが分かるのではないでしょうか。非常に小さいがゆえに、PM2.5は人間の肺の奥や気管支に入り込むことが可能です。そのため、呼吸器系の病気(ぜんそく、気管支炎など)に悪影響を及ぼすとされています。
人体への影響を避けるためには、濃度が高い日の外出の自粛やマスクの着用、窓の開閉を最低限に抑えるなどが有効でしょう。体調のことを考え、いずれも日常生活に影響を与えない範囲で実践したいところです。
酸性雨の発生
酸性雨とは雨や雪、霧に酸性物質が溶け込むことで強い酸性を示す雨のことです。酸性物質には硫黄酸化物や窒素酸化物が挙げられ、これらは主に自動車や工場から排出。硝酸や硫酸への変化を経て雨などに溶け込み、この時の雨などはph5.6以下を示す酸性(中性はph7)となっています。
このレベルの酸性となっている雨は、森林を枯らしたり建物に使われているコンクリートを溶かしたりします。また、酸性雨が銅像や銅が使われている屋根の錆の原因になることもあるようです。生物に関しては、河川が酸性化することによって生態系に影響を与えるケースが確認されています。
酸性雨の発生の原因となる酸性物質は、自動車やボイラーから発生するガスを原因に発生します。自動車やエアコンの使用頻度を減らすといった行為は、酸性雨の影響を減らすことに貢献できるのではないでしょうか。
私たちが空気を汚さないためにできること
大気汚染は、さまざまな問題を引き起こし、私たちの健康に被害を及ぼしかねません。そのため、大気汚染を対策する方法を知り、できる範囲で実際に実行していく必要があります。ここでは、空気を汚さないためにできることについて見ていきます。
省エネを心がける
省エネとは、エネルギーを効率よく使用し、エネルギー資源の不足を防止すること。エネルギー効率の向上は、電力量の使用料を抑えることに結びつきます。一人ひとりのちょっとした心がけにより、発電に関する大気汚染物質の排出量を減らすことが可能です。
例えば、家庭内では冷房の設定温度は28℃を目安にしてみてください。冷風を部屋の中で循環させるためには、扇風機を活用するのもおすすめです。フィルターの定期的な清掃や部屋のカーテンを閉めることも併せて心がけるとなおよいでしょう。
洗濯機を使用する場合は、一度の洗濯の量を調整してみましょう。大量の洗濯物を一度で洗うと効率がよいと考えている人もいるかもしれません。実際には、洗濯機ごとに決まっている「一度で洗濯できる量」を超えないように洗った方が使用するエネルギーや水を無駄にせずに済みます。
冷蔵庫は、食材を詰め込まないようにすることがおすすめです。冷蔵庫は、入れた食材の分だけエネルギーを消費します。過度な詰め込みを控えることで、無駄なエネルギー消費を防ぐことが期待できるでしょう。
徒歩や自転車を積極的に利用する
大気汚染は、自動車の排気ガスが原因となっているケースが多くあります。そのため、自動車の使用を控えると排気ガスの量を減らすことが可能です。
日本政府もCO2排出削減の取り組みの一つである「スマートムーブ」を、広報を通じて紹介しています。首都圏など、公共交通機関が整備されている地域で生活している人は、通勤や買い物の際に徒歩や自転車の利用を検討してはいかがでしょうか。
エコドライブを心がける
公共交通機関の利用では不便な人や、通勤手段としてどうしても自動車が必要な人もいるかもしれません。その場合はエコドライブ(燃費のよい運転)を心がけることをおすすめします。エコドライブには特別なドライビングテクニックは不要とされています。まずは次のようなことを実践してみてください。
- 急発進、急停止をしない(アクセルをふんわりと踏む)
- 走行速度を一定に保つ
- 渋滞する道路の利用を避ける(渋滞しにくい時間に利用する)
そのほか、エアコンの利用を最低限にすることも挙げられます。天気に合わせて、こまめに温度や風量を調節し、無駄なエネルギー消費を防ぎましょう。
遠出は交通機関を利用する
旅行などを計画する際は、公共交通機関を利用した移動を心がければ、一人あたりが排出する排気ガスの量を抑えることが可能です。昨今の日本では、ハイブリッドエンジンを搭載したバスや自然エネルギーを活用した車両なども運用されています。
ただし、公共交通機関の負担が大きく、車の利用もやむを得ない人もいるかもしれません。必要に応じて使い分け、移動手段以外で大気汚染を抑制する行動をとっていきましょう。
ゴミを減らす
ゴミの量を減らすことは、ゴミ焼却の際に発生する有害物質の量を減らすことにつながります。例えば、毎日の食事の準備の際に必要以上の量を作らないこともゴミを減らすのに有効。買い物の際に足が早いものを過剰に買わないよう心がけることも大切です。
また、日常的に買い物用のマイバッグを使用してはいかがでしょうか。マイバックの利用は、ゴミとなるレジ袋の削減につながります。使い捨てではなく、繰り返し使用できるものを選ぶとなおよいでしょう。
VOC対策をする
VOCとは「Volatile Organic Compounds」の略称であり、大気中で気体になる有機化合物(揮発性有機化合物)を指します。塗装や建設工事、印刷、機械の洗浄、自動車への給油の際に排出される物質です。VOC対策とはこの有機化合物の排出を抑制することで、大気中のVOC濃度の低減に取り組むことです。
一般的にVOC対策は企業が取り組みますが、個人でもできることはあります。次のような製品を購入する際は、下記のポイントを意識してみましょう。
製品 | スプレー製品 | 塗料 | 接着剤 |
ポイント | エアゾール製品は控える。霧吹き式やポンプ式、圧縮ガスを用いたものを選ぶ。 | 「低VOC塗料」の表記があるものを選ぶ。シンナー系ではなく、水性のものを選ぶ。 | 水性のもの選ぶ。ホルムアルデヒド不使用、もしくは放射量が少ないものを選ぶ。 |
まとめ
大気を汚染する物質は、自然に発生するものもありますが、人間の活動によって生まれるものも少なくありません。自動車の排ガスなど、汚染物質は身近なところから生まれています。日本国内だけでなく、世界規模の課題に立ち向かうためには、私たち一人ひとりができることに取り組む必要があるといえるでしょう。
私たちができることは、基本的にエネルギーの消費量を抑えるよう意識してみることです。自動車の使用頻度を抑える、もしくはエコドライブを意識する、無駄なゴミが生まれないよう買い物の段階で工夫をするなど、簡単に取り組めることも多いので、空気を汚さないためにできることを考えて実践してみてはいかがでしょうか。