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「殺菌」「除菌」「滅菌」「抗菌」の違い|菌を減らす具体的な方法もご紹介

殺菌をはじめとして、菌を減らす種類名や方法は複数あります。殺菌や除菌、滅菌などの特徴、具体的な方法を把握して、正しく使い分けたい方も多いかもしれません。

今回は、微生物の特徴を解説した上で、殺菌・除菌・滅菌・抗菌の違いを紹介します。さらに、菌を減らす4つの方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

微生物とは

微生物とは、その名の通り「微小な生物全体」を指す言葉であるため、生物を限定的に指しているわけではありません。顕微鏡を使うことなしには確認できない、あるいは肉眼であっても確認が難しい微小な生物は、全て微生物と呼ばれます。

微生物の種類は、主に以下に分けられます。

【微生物の種類】

  • 原核原生生物:核膜(※)を持たない細胞構造が特徴で、細菌類が含まれる
  • 真核原生生物:核膜を持つ細胞構造が特徴で、真菌類が含まれる
  • ウイルス:遺伝子とタンパク質の殻で構成されており、インフルエンザウイルスやノロウイルスなどが含まれる

※核と細胞質を隔てる膜のこと。

このことからもわかるように、細菌類やウイルスも微生物の一種です。次に、微生物のサイズ感についても詳しく確認していきましょう。

微生物のサイズ感

微生物のサイズ感は、主に以下のような特徴があります。

【微生物のサイズ感】

サイズ感種類サイズ特徴
ウイルス約10~200nmインフルエンザウイルスやノロウイルスなどを含み、電子顕微鏡でなければ確認ができない。
細菌約0.5~3μm大腸菌やサルモネラ菌、ブドウ球菌などを含み、光学顕微鏡でも確認が可能。
真菌約5〜12μmカビ類や酵母、キノコなどを含める。カビ胞子は目には見えないが、有色の胞子、あるいは菌糸が繁殖した状態であれば目視が可能。

※nm=ナノメートル:0.000001mm
※μm=マイクロメートル:0.001mm

上記の表の通り、サイズ感はウイルス、細菌、真菌の順に大きくなります。そのため、ウイルスは電子顕微鏡でなければ目視が不可ですが、細菌は光学顕微鏡であっても確認が可能です。真菌については一定の条件下で繁殖した状態であれば、目視で確認できます。

ナノシード ナノシード

殺菌・除菌・滅菌・抗菌の違い

殺菌や除菌など、菌への対策方法の違いは、それぞれ以下のように定義づけられます。

菌を減らす効果の程度種類特徴
滅菌菌の数を限りなくゼロに近づけること。殺菌や除菌に比べると効果が高い。
殺菌菌を殺すこと。菌の種類や数の規定はないため、一部の菌を殺した場合も該当する。
除菌菌を取り除いて、その数を減らすこと。殺菌と同様、菌の種類や数の規定はない。
抗菌菌の増殖を抑えること。菌を殺したり取り除いたりするのではなく、菌が定着しづらい環境を作ることが目的。

上記の表によると、菌を減らす効果の程度は、滅菌から抗菌まで4段階に分かれています。ただし、中には明確な定義がないものもあるため注意しなければなりません。

以下の項目では、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

殺菌とは

殺菌とは、その名のとおり「菌を殺すこと」を指す言葉。ただし、殺す菌の種類や数が明確に規定されているわけではないため、全ての菌を殺さず一部の菌を殺した状態であっても「殺菌」に該当する点が特徴です。

そのため、仮に殺菌をうたう製品があるとしても、一概に有効性が保証されているとは言い切れないでしょう。また、「薬機法の対象となる製品に使える」という表現規制があることも特徴であり、殺菌をうたえるのは以下の製品に限られます。

【「殺菌」と表現できる製品】

  • 医薬品:厚生労働省によって「配合された有効成分の効果」が認められているものを指し、消毒液などが該当する。
  • 医薬部外品:厚生労働省が許可した「効果・効能に有効な成分」が一定濃度で配合されたものを指し、薬用石けんなどが該当する。

上記の通り、殺菌をうたえるのは医薬品、もしくは医薬部外品に限られるため、洗剤や漂白剤などの雑貨品には使用できません。

除菌とは

除菌とは、ウイルスや細菌などの微生物を取り除き、その数を減らすこと。殺菌と異なり、除菌には表現規制がないため、業界団体がそれぞれで「除菌」を定義付けているのが実態です。

例えば、洗剤・石けん公正取引協議会では、以下のように除菌を定義しています。

“物理的、化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を、有効数減少させること”

このように、除菌の定義は各業界団体で異なるという特徴があります。除菌が使われるのは主に雑貨品で、日常用品でいうとアルコールスプレーや洗剤、清拭用クロスなどです。

そのため、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って「除菌をうたう商品」の需要が増加した際には、アルコール除菌が可能な商品の含有成分として、人体への毒性が高い「メタノール」を主成分とした商品が出回るなどのトラブルが発生しました。公的な規制がない分、消費者側がしっかりチェックすることが大切です。

滅菌とは

滅菌とは、有害・無害を問わず、全ての微生物を限りなくゼロに近づけることで、死滅・除去することを指します。主に病院の医療器具を対象に実施され、血管系や無菌の組織に挿入する手術用器具や注射器、縫合器具などに必要な処理です。

滅菌は「確率的な概念」とされており、微生物の死滅特性は指数関数で表されます。また、滅菌方法の種類は以下の通りです。

【主な滅菌方法】

  • 高圧蒸気滅菌:一定の温度・圧力の飽和水蒸気で加熱して滅菌する方法で、比較的短時間で行える。
  • 乾熱滅菌:乾燥した空気を加熱して滅菌する方法で、水に弱いものに対しても滅菌が可能。
  • 低温ガスプラズマ滅菌:真空状態の容器内に過酸化水素を噴霧し、プラズマ現象を利用することによって滅菌する方法。

いずれの滅菌処理も専用の装置を必要とするため、日用品の菌を減らしたい場合などは処理が難しいでしょう。

抗菌とは

抗菌とは菌の増殖を防ぐ処理のことであり、その数や程度は含まれていません。法令などで明確な規制が敷かれていないため、業界団体ごとに広義に使われている点が特徴です。

なお、経済産業省では抗菌加工を施した製品を「抗菌加工製品」とし、その効果は「製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」としています。抗菌加工製品は種類が豊富であり、例えば以下の通りです。

【抗菌加工製品の例】

  • 日用品:まな板、スポンジ、ブラシ、手袋、靴など
  • 電化製品:空気清浄機、冷蔵庫、掃除機、電卓など
  • 住宅建材:便器、壁紙、タイル、塗料など

ちなみに、JISでは、抗菌性を担保できる規格を「JIS Z 2801(繊維以外)」や「JIS L 1902(繊維)」などで管理しています。

菌を減らす方法

菌を減らす主な方法は、以下の4つです。

【菌を減らす方法】

  • 加熱
  • エタノール殺菌
  • 紫外線
  • ガス殺菌

加熱やエタノール、紫外線で菌を減らす方法があるほか、ガス殺菌という方法もあります。それぞれの特徴について確認していきましょう。

加熱

有機物で構成されている菌は、熱に弱い特性を持っているため、加熱処理で菌を減らす効果があります。なぜなら、菌に熱を加えることによって、菌が保有するタンパク質や酵素が変性し、機能を失って死滅するためです。

加熱処理をする場合、特に食品に対して実施するケースが多いのではないでしょうか。食中毒を引き起こす恐れのある代表的な菌は、以下の通りです。

【菌の種類や死滅条件】

菌の種類加熱温度の目安加熱時間の目安特徴 
腸管出血性大腸菌(O157)75℃1分生肉(主に牛肉)などに含まれ、腹痛や水溶性の下痢の症状を引き起こすおそれがある
サルモネラ属菌75℃1分生肉やレバー、卵などに含まれ、下痢・腹痛・発熱・嘔吐の症状を引き起こすおそれがある
カンピロバクター75℃1分生肉(主に鶏肉)などに含まれ、頭痛や倦怠感、激しい腹痛、下痢、嘔吐の症状を引き起こすおそれがある
リステリア菌65℃数分乳製品や食肉加工品などに含まれ 、悪寒や発熱などの症状を引き起こすほか、重篤な場合は敗血症や髄膜炎になるおそれがある

注意すべきなのは、加熱時間はあくまで菌の死滅条件であるという点です。食品の中心部まで熱を加えるとなると、それぞれの食品の種類や厚みなどの条件によって、加熱時間は変わってきます。例えば、厚さ1cm程度の肉や魚を煮る(沸点100℃)場合は、食品の中心部まで熱が加わるまで8~10分程度の時間を要するといった具合です。

このように、加熱処理における時間はケースバイケースで変わることを念頭に置いて、処理を施すことが大切です。

エタノール殺菌

エタノール殺菌とは、一般的にアルコール消毒液を使った殺菌方法。エタノールはアルコールの一種で、「エチルアルコール」もしくは「酒精(しゅせい)」と呼ばれるケースも少なくありません。市販されているエタノールの種類は、成分濃度の違いによって大きく3種類に分けられます。

【エタノールの種類】

  1. 無水エタノール:濃度99.5vol%(※1)以上で、アルコール度数が高く蒸発しやすいため、電化製品の手入れなどに適している。
  2. エタノール:濃度95.1~96.9vol%で、清掃などの用途に適している。
  3. 消毒用エタノール:濃度60~80vol%(※2)程度で、無水エタノールと比較して蒸発しづらいため、消毒能力が高いとされている。

※1 vol%=アルコール濃度の単位のこと。
※2 WHOガイドラインで推奨されている濃度。

上記の通り、エタノールは濃度によって大きく3段階に分けられ、日常的に使用するものとしては「消毒用エタノール」が最も適しています。例えば、手指の消毒、人が触れた箇所の消毒なども可能であり、無水エタノールに比べると肌への刺激もあまり強くありません。

エタノール殺菌を実行する際は、濃度による違いを把握した上で、適切に使い分けることが大切です。

紫外線

対象物を紫外線にあてることで、滅菌することが可能です。なぜ菌を減らせるかというと、細菌やウイルスが保有するDNAに紫外線が吸収されることで、DNAの遺伝コードが破壊されて増殖できなくなり、結果的に死滅するためです。

例えば、日常生活において洗濯物を外に干す行為は、紫外線の滅菌作用を利用できるため、理にかなっている方法といえるでしょう。

また、紫外線は波長の長さに応じて、3つの種類に分けられます。

【紫外線の種類】

  • 315~400nm:UV-A
  • 280~315nm:UV-B
  • 100~280nm:UV-C

DNAに吸収されやすい紫外線の波長は「260nm付近」とされており、上記では「UV-C」が該当。そのため、低圧水銀ランプなどの紫外線滅菌を行える製品では、この付近の波長を利用しています。

ガス殺菌

ガス殺菌の効果があるガスの種類としては、アルキル化剤の気体(ガス)である「酸化エチレンガス(エチレンオキシド)」や「ホルムアルデヒド」、酸化剤である「オゾン」などが挙げられます。

ガスでどのように殺菌するのか、酸化エチレンガスを例に解説しましょう。その方法は、微生物を構成しているタンパク質や遺伝子の核酸と、酸化エチレンガスをアルキル化(※)させることによって、死滅させるというものです。
※付加、もしくは置換で、有機基質分子にアルキル基を結合させること

なお、殺菌で使用するガスには、人体に有害なものが多いため、殺菌処理を施す対象物のガス残留や、処理終了後の装置内の排気には注意が必要です。

労働災害事例としては、病院内で「殺菌乾燥薫蒸装置」を使った殺菌作業中に、殺菌チャンバー内に残留する酸化エチレンガスを吸引した作業者が中毒にかかった事例もあります。この事例は、残留ガスの除去工程を通常6時間すべきところを、1時間で停止してチャンバー内に入ったため、中毒症状に陥ったというものでした。

殺菌効果が高い分、ガスを使用する際は事業所内におけるルール決めなどを徹底することが大切です。

まとめ

菌を減らす方法には、殺菌や除菌、滅菌、抗菌の種類があり、菌を減らす効果の程度や特徴はそれぞれ異なります。また、具体的な対策方法には日常生活でも身近な「加熱」や「エタノール」、「紫外線」を使った方法のほか、「ガス殺菌」と呼ばれる方法もあります。

人体への被害がないよう、正しい処理方法を踏まえた上で対策することが重要だといえるでしょう。今回ご紹介した内容を参考にしていただき、対象物に適した「菌を減らす方法」を探ることをおすすめします。

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